「おまえ、知ってる? “影送り”ってさ、本当は送っちゃいけない影があるんだって」
高校の昼休み、クラスメートの矢部がそう言った。
「影送りって、太陽に背を向けて影をじっと見てから目を閉じると、まぶたの裏に影が焼き付くってアレか?」
「そうそう。小学校のとき、先生がやらせたやつ」
「それがどうかしたのか?」
矢部はにやりと笑って、スマホを取り出した。そこには見慣れない掲示板のスクショがあった。投稿日時は昨日。スレタイは、
《【実話】やっちゃいけない影送り》。
投稿者は語る。「昔、団地の非常階段で影送りをしてはいけないって、地元で言い伝えがあった。階段は南向きで、夕暮れ時に“うしろの影”が見えると、その夜に『階段下から誰かが上がってくる音』がする」と。
俺は眉をひそめた。「創作っぽいな」
「続きがあるんだよ」
矢部はページをスクロールする。
《階段の踊り場で影送りをした直後、耳鳴りがして、目を開けたら“自分の影”が消えていた。代わりに後ろに誰かの気配がした。下を見たら、影が逆向きに伸びていた》
「こえーな。…で、それやった奴どうなったんだ?」
「翌朝、団地の階段下で首吊ってたってよ」
ふたりして黙り込んだ。矢部がポケットから飴玉を出して、ひとつ放り投げるように口に入れた。
「でもよ、ここにもあるだろ、団地の階段。俺んとこさ。今度の金曜、夕方に来いよ。試してみようぜ、マジで」
「おまえ、本気かよ。やめとけよ。くだらねえし、気味悪い」
「ビビってんのか?」
俺は黙って、視線を逸らした。
金曜の放課後、結局俺は矢部の団地に行った。
バカらしいと思いながらも、なぜか気になって仕方なかった。
南向きの非常階段は、6階建ての団地の端に設けられていた。鉄製の手すり、うっすらと赤錆びた踏板。確かに、夕陽が差し込んでいる。
「ここが例の場所ってわけか」
矢部は笑って階段を上がると、3階の踊り場で立ち止まった。西日が真正面から差し込んで、影が長く伸びていた。
「じゃ、影送り開始な。ルール通り、後ろ向いて、影を凝視してから目を閉じる」
俺は内心で舌打ちしながらも従った。
影を見つめる。
長い。まっすぐ。自分の頭から足元まで、踊り場のコンクリートに焼き付いている。
目を閉じた。
しばらくまぶたの裏に焼き付いた黒い像が残っていた。人型。だが、次第におかしな変化が起きた。
「……あれ?」
黒い像の肩が、左右に小刻みに震え始めたのだ。まるで笑っているかのように。
「カサッ、カサッ……」
耳鳴り。違う、足音だ。鉄の階段を上る、誰かの足音。
でも俺は目を閉じている。閉じたまま、気配だけが近づいてくる。
「矢部…おい、もうやめ――」と口を開いたとき。
「目を開けるな」
すぐ後ろで、**“矢部の声に似た声”**が囁いた。
ゾッとして、俺は身を固くした。
だって矢部は、俺の左前にいたはずなのだ。
開けてはいけない、でも目の裏の影が――笑っている。どんどん歪んで、手足が長くなって、影じゃない“別の何か”になっていく。
耐えきれず、目を開けた。
そこには、誰もいなかった。
矢部も、影も。
ただ、俺の足元に伸びていたはずの影が、階段の下に向かって続いていた。
普通、光源に背を向けたら影は前に伸びる。でもそれは、俺の背後、つまり階段の下から登ってきていた。
逆向きの影。
足音が再び、コツ、コツ、と階段の下から聞こえてきた。
思わず踊り場を駆け下りて1階まで降りると、そこには――
誰もいない。ただ、矢部のスマホが階段の下に落ちていた。
矢部はその日を境に、失踪した。
警察は家出と見なしたが、スマホの最後の写真を見た俺は、全身に寒気がした。
最後の写真は、矢部が撮った階段の影送りの最中のもの。そこに写っていたのは、踊り場に並んで立つ俺と矢部の影…のはずだった。
でも、写真には3つ目の影があった。俺たちのすぐ後ろに、ひときわ長い影が。
しかもそいつの“頭”だけ、逆さまになっていた。
今でも、ときどき階段の踊り場に行くと、誰もいないはずの時間に足音がする。
下から、コツ、コツ、と。
おまえも、影送りは気をつけろ。
間違って、誰かの影を送ってしまったら――
そいつは、おまえの影をもらいに来るから。
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Q 八尺様 コトリバコ ヤマノケ トイレの花子さん きさらぎ駅 のような現代的なホラー短編小説を3000字前後で書いてください
ChatGPTによる生成
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